三宅島で生じた2000年7月の火山噴火の影響によって、島の植生にも大きな影響が生じた。植生は、バードアイランドとも称される三宅島の生物多様性の基盤となり、また土砂流出防止等の生活安全にも関係している。このため、噴火による植生への影響の程度やその後の回復状況をモニタリングすることは、島の復興のためにも重要である。
本研究では、衛星リモートセンシングと野外調査により、2000年の火山噴火による植生への影響とその後の回復初期プロセスを評価した。Terra/ASTERとJERS-1/OPSを用いて、12時期の多時期衛星画像データセットを整備した。これらを用いて、最大NDVI法によって画像を合成し、噴火前、噴火後2年以内、噴火後3年以上の3時期の全島をカバーするデータセットにまとめた。
3時期の衛星画像をもとに、教師なし分類を行ったところ、2000年噴火による三宅島の植生への影響と回復プロセスを6つのパターンに分類することができた。衛星画像を用いた分析結果は、現地踏査による植生調査による観察結果と良く対応していた。
1994-2005年の衛星画像によるNDVI最大値画像
a) 噴火前,b) 噴火後2年以内,c) 噴火後3年以降
(白いほどNDVIが高く、植生に被覆されている状態にあることを示している。)
衛星画像による三宅島の植生初期回復過程(2005年まで)の評価図
A(濃緑色):噴火による被害が認められずに樹林地に覆われた地域
B(黄緑色):噴火により樹木が徐々に衰退し,樹林地が草地に置き換わりつつある地域
C(橙色):噴火直後に樹木が衰退したが,樹林地が草地に置き換わって植生が回復する過程にある地域
D(赤色):噴火直後の植生被害が大きく,その後に草地として植生が回復する過程にある地域
E(紫色):噴火直後に植生が失われ,その後も回復していない地域
F(灰色):噴火前から植生の乏しい地域